南アフリカ戦で勝利したニュージーランド代表は、試合後スタンドに向かって観客にお辞儀して御礼をした。そのほかの試合でも、お辞儀をする各国の選手たちが現れた。
そこにはラグビーの根底に流れる精神が、日本の武士道にも通じているのかも知れない。
日本式で礼を尽くし、観客にお辞儀をする姿に日本のファンからも、「最高の試合の後にこの心遣い。素晴らし過ぎます」と感謝の言葉が寄せられている。
ニュージーランド代表が試合後に見せたお辞儀
ニュージーランド代表オールブラックスは試合後に、これまでにない異例なことだが、スタンドへ向かってお辞儀をした。
このシーンについてリード主将はこう振り返っている。
「できるだけ日本の皆さんと繋がりたい。私たちを愛してくださっていた。今日も素晴らしかった。オールブラックスのジャージを着てくださっていた方もたくさんいた。そういう思いには応えたいと思いました」
試合前からオールブラックスのユニフォームに身を包んだファンがたくさん詰めかけ、まるで、ホームチームのように声援を送ったことに対して、胸を打たれたようだ。
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オールブラックスの試合前の儀式「ハカ」も相手へのリスペクトの表れだった。
ラグビー界に『お辞儀』ブームが生まれつつある
大会3日目に大阪・花園ラグビー場ではプールBのイタリア対ナミビアが行われた。
途中、土砂降りの雨となるなど悪条件での試合は、イタリアが47-22で勝利。
試合終了後には、両チームが客席に向かって深々とお辞儀をして挨拶し、ファンからスタンディングオベーションを受ける一幕もあった。
イタリアの主将セルジオ・パリセは試合後、日本式の挨拶を披露したことについて、目を輝かせながら説明した。
「お辞儀したのは、日本と日本のファンに対する感謝です。今日は途中から大雨が降ってきたのに、席を立つことなく80分間、試合を見続けてくれたファンに感激しました」
ナミビアのFBヨハン・トロンプも「日本に来て以来、本当に素晴らしいおもてなしをしてもらっている。試合でも大きな声援を送ってもらえた。それに対して、僕たちもリスペクトを示したかったんだ」と話した。
長友の貢献もあるのではとの声もある
2011年にイタリアセリエAにデビューした長友佑都選手が、名門インテルに所属しているときに、世界中のスター選手を相手に見せた背筋をピッと伸ばす、お手本のようなお辞儀をチーム内に浸透させた。
長友の活躍が続き、お辞儀が彼の代名詞になっていくと、イタリアでも特集を組んでお辞儀について特集まで組まれたという。
お辞儀とは・・・相手に急所である頭を差し出し、敵意がないことと敬意を示すもの
ヨーロッパへのお辞儀文化を知らしめたのは、この長友選手の影響が大きいかも知れない。
ラグビーはリスペクトの精神が大切
●ラグビーはリスペクトのスポーツである。
*審判へのリスペクト
ラグビー選手は、判定に異議を唱えない。
審判がいなければ、ゲームは秩序を失ってしまうし、練習の成果を試合で発揮できるのは、ゲームをコントロールする審判がいるからだ。
審判をやるには資格が必要だし、試合のために準備をしている審判の努力に対する敬意の表われとして審判へのリスペクトを忘れない。
対戦相手と罵り合ったりすることもない。小競り合いや乱闘騒ぎが起こるのは、ごく稀なケースと言っていいだろう。
*対戦相手へのリスペクト
ぶつかり合うスポーツならば、感情的になり乱闘に発展しかねない要素が多いラグビーだが、その頻度は極めて少ないという。
対戦相手がいなければ、ゲームは成立しない。
自分たちと同じように真摯にボールを追い続けてきた相手への敬意があるから乱闘や相手を罵ることはできるはずがないというのだ。
*観客へのリスペクト
声援があるから、選手は頑張れる。
その声援に応えようとするからノーサイドまで走り続けることができるエネルギーを与えてくれる。
観客が望むのは乱闘ではなく、沸き立つようなプレーである。
*スタッフへのリスペクト
ゲームができるのは、数多くのスタッフが運営に携わっているからに他ならない。
グラウンドを整備する人がいて、観客を座席に案内する人がいて、飲食やグッズを販売する人がいて、警備をする人がいる。
競技場にいるのに、ゲームを観ることのできない人たちは多い。
リスペクトの精神に貫かれているスポーツ、これがラグビーだ。
対戦相手にも、審判にも、観衆にも、運営に関わるスタッフにも、スタンドに来られないファンにさえも、最大限の敬意を払うということになるんですね。
ニュージーランド代表から火がついたお辞儀ブーム。このW杯は「お辞儀の大会」として世界のラグビーファンの記憶に残ることになるかもしれない。
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